リフォームと建て替えのどちらが優れているかという問いに対し、私は常にその家のポテンシャルと住む人の価値観次第だと答えています。建築家の視点から見たリフォームの最大のメリットは、その家が持つ歴史や固有の風合いをデザインに昇華できる点にあります。古い家が持つ太い梁や経年変化した木の質感は、新築で再現しようとしても不自然になりがちですが、リフォームなら本物のヴィンテージ感を活かした唯一無二の空間を作ることができます。一方でデメリットは、やはり構造上の制約です。抜けない柱や動かせない壁が存在するため、完全な自由設計とはいかず、間取りの変更には限界があります。また、工事を始めてから壁の中に予期せぬ腐食が見つかるといった追加費用のリスクも避けられません。これに対し、建て替えのメリットは圧倒的な自由度と性能の担保です。ゼロから設計するため、採光や通風、家事動線を極限まで最適化でき、住宅性能表示制度における最高等級を確実に取得できます。最新の免震技術やスマートホーム機能を統合するのも容易です。しかしデメリットとしては、費用が膨大になることと、工事期間が半年以上に及ぶため生活への負担が大きいことが挙げられます。また、法律の改正によって現在の家よりも狭い家しか建てられなくなるという土地固有の罠も存在します。私はよくクライアントに、家を体、リフォームを整形手術、建て替えを生まれ変わりと例えます。体そのものが健康で、一部の機能改善や若返りを目指すならリフォームが適していますが、体質そのものを変えたい、あるいは基盤が崩れているなら生まれ変わりが必要です。また、最近ではサステナビリティの観点から、使える構造体は極力再利用するリフォームが世界的な潮流となっています。環境負荷を抑えつつ、現代の技術で居住性を高めることは、現代の建築における知的な挑戦でもあります。どちらを選んでも正解はありますが、大切なのは、古い家の欠点だけを見るのではなく、その家がこれまで家族を守ってきた強みを見極めることです。建築家として、その強みを最大限に引き出すお手伝いをすることが、私たちの使命だと考えています。